最終更新日 : 20 Jun.2004
7MHzフェーズド・バーチカルアンテナ なぜ、垂直系アンテナか? IOTA AS-049宝島から運用しようと計画したときに、ローバンドのアンテナは、どうしようかと言う話になりました。サイクルピークの時は、ローバンド無視でハイバンドでジャンジャン呼ばれればいいと言う話になるのですが、さすがにサイクル23下降期の現在では、ローバンド、特に7MHzが稼ぎ頭になるだろうと予想し、アンテナの検討を始めました。 目標は、すこしでも強力なシグナルをEUに送り込むということで、一般的に打ち上げ角が低いと言われている、垂直系のアンテナに安易に決めてしまいました。しかも、1本のバーチカルより2本である程度ゲインと指向性が出ればなお良しということで、フェーズド・バーチカルという結論に至りました。 ダイポール・アンテナとの違い 南大東島では国内用に適当に張った4mhくらいのDPでGやEAにも呼ばれた実績があるのですが、MMANAで解析してみると以下のような結果が出ました。 なんとなく分かっていたものの、ちょっとショックです。DPの場合は、打ち上げ角90°、一方GPの場合は、23°になりました。当然ですが、グランドが完全導体と仮定すると、DPは、打ち上げ角90°、GPは打ち上げ角0°になります。バーチカルは、アースが命ということがよく分かります。DPの打ち上げ角をGP並にしようと思えば、シミュレーションの結果、地上高20m以上必要ということがわかりました。移動運用などにタワーを持ち込むのは、不可能なので、垂直系という選択肢になりました。 結果から分かるように、DXに対しては、垂直系の方が有利なのが実証されました。ただし、この段階では、まだ机上の論理ですが。 製作開始 7MHzの1/4λは約10mなので、簡単に10mの垂直部分を稼ぐためにグラスファイバー釣り竿を購入しました。横浜のハム・ランドでPG-ANT-100を購入しました(その後、在庫切れになっているそうです)。エレメントとラジアルは、1.25sqのIV線を購入しました。 10mのグラスファイバー釣り竿 ラジアルについて 一番肝心なのがラジアルですが、はじめは、ラジアルを12本くらいとアース棒を何本か併用することを考えていましたが、K2KWのヴァーチカルアンテナのページを見ると、エレベーティッド・ラジアルが推奨されていて、海水の近くでは、ラジアルの本数は、2本で良いとの記事を見つけました。ということで、それを信じることにして実験をしてみることにしました。 給電方法 バーチカル・GPは、普通50Ωより低いインピーダンスになります。本当なら、マッチングを取る必要がありますが、今回は、面倒なので直接50Ωの同軸直づけにしました・・・。 給電点の地上高は? 給電点の高さは、K2KWが書いているように1.2mで実験をはじめました。この段階では、SWR=1.5まで落ちました。家に帰ってシミュレーションしてみると、30cmが最適となりました。実際に、0.3mで実験すると、SWR=1.3まで下がりました。その後、他の方の話から波長に対する地上高が低すぎるのではないか?という話を聞いたので、再度シミュレーションやり直しで、結局、給電点を1.2mにしてラジアルをスローピングさせることで、さらにSWRが下がる結果が出たので、本番で実験してみることにしました。 2エレメント フェーズド・バーチカル 2本のアンテナに同時に給電するわけですから、同相で給電する場合は、V/UHFのスタックアンテナと基本的には、構造は一緒です。ごく一般的なQマッチを採用しました。同軸を1/4λ*(短縮率)に切るため、アンテナアナライザーで測定しながら切ります。結局、フジクラの同軸は、仕様通り、四国電線の同軸は、若干高めの短縮率でした。 (左)完成したスタックケーブルと-90度用の位相切替用(手動切替...)のケーブル
位相給電すると指向性が出ます。片側を-90°遅らせて給電するわけですが、1/4λ*(短縮率)の50Ωの同軸ケーブルを作り片側に余分に挿入することで作りました。 本来なら、リレーなどを使って、1/4λ*(短縮率)の50Ωの同軸ケーブルを入れたり、外したりすれば良いのですが、常設では無いので、コネクタを付けて手動切替にしました。NA方向は、同相給電、EU方向は、位相給電と決めました。 ビームパターン 1/4λの間隔で(左)位相給電した場合、(右)同相給電した場合 同相給電の場合、1/4λでは間隔が狭いのであまりゲインが出ませんが、1本よりは、多少はましです。 いざ現地で建設 バーチカルを海水近くに立てるときは、1/4λ以内が良いということだったので、つねに10m以内に海水がある珊瑚礁の岩の上にたてることにしました。ステーは、釣り竿の約半分あたりから3方向に取りました。釣り竿の根本はペグで一応固定しました。地上高は、約1.2mくらいから、なんとなく斜めに2本のラジアルを対象に張ります。珊瑚礁の岩なのでペグをさす場所に困りましたが、見かけ上は、ささっている感じです。その後、暴風雨になり、いつ倒壊するか心配していましたが、なぜか倒壊しませんでした。釣り竿の受風面積が小さいのと、釣り竿がうまくしなってくれたからでしょうか?ちなみに、ペグが5cmくらいしか、刺さっていないところがあり、さらにビックリしました。 使用感 ココが、一番肝心なところです。今回、7MHzは、7mhのDPも建てたので、同軸切替器で手元で切替ながらQSOすることができました。実は、同相給電・位相給電を切り替えて使用するつもりでしたが、NAからEUに切り替えるタイミングが夜中になるので諦めました。理由は、ハブが出るかもしれないらしいからです・・。ハブは夜行性で、今回の宝島には、トカラハブが住んでいて、冬眠はしないそうで・・。ハブに咬まれると、ヘリを呼ばないと行けなくなるので、気をつけてくれと役場の出張所の方に言われましたので、諦めました。 幸いビームパターンを見ると分かるように、そんなにキレが良いわけでもないので、位相給電のまま使うことにしました。 結論から言うと、良く飛びました。8,000km以内のロシアまでは、DPとの違いがあまり分かりませんでしたが、8,000kmから10,000kmの局では聞こえ方に違いが出てきました。バーチカルで聞くと599くらいの信号がDPでは579くらいになります。簡単に言えば、ATTを入れたような感じになります。そして、10,000kmを越える局(EA 約11,000km, EA8 約12,000km)になると、バーチカルでは聞こえていても、DPでは全く聞こえない・ほとんど聞こえなということも体験できました。 休日でPJ2の局がかなりのパイルだったのですが、あっさりパイルを抜くことができビックリや、ZD8が強力に入感していました(これは、EUのパイルが激しかったので呼ばなかった・・・)。 垂直系は、ノイズが多い? よく言われることなのですが、今回実験では、ノイズが多い日もあるとしておきます。今回実験した、宝島では、周囲は海しかない人口ノイズがきわめて少ない環境から運用しました。バーチカルでノイズが多い日は、DPにするとノイズが少なくなるので、受信用にDPを使いながら運用しました。逆に、バーチカルは静かなのに、DPはうるさい日もありました。バーチカルがうるさかった日は、K-indexが高い時間とちょうど重なるので太陽活動による影響を受けやすい?のかもしれません。 片付け 海から10m以内のところに建てれば、当然、すべて塩でガリガリです。さらに、困ったことに、防水していたはずのコネクタに塩水が混入し、スパークして焦げていました・・・。今回は、固定局を降ろして運用したので200W(といっても片側100W)しかパワーは入っていないはずですが、恐るべき塩パワー・・・。
携帯電話で撮影したので、画質はよくないです もっとしっかり防水するべきでした・・。おかげで、すべてコネクタ交換になりました。 今後の課題 1つ目は、フェーズド・バーチカルでなくて、垂直八木の実験です。K2KWは、こちらを推奨しています。2つ目は、4SQを試してみたいということです。ただし、釣り竿が入手困難なのでアルミパイプでつくると結構予算がかかるのが難点です。3つ目は、給電方法の見直しです。今回、アンテナアナライザーは、必須ということを強く感じました。結局、何をしてもお金がかかるので、予定は未定です。 最後に 結果としてこの場合、バーチカルアンテナは成功だったのですが、これは、すぐ側に海があることが大きく影響していると考えています。IOTAペディションなど海の近くにアンテナを張るならバーチカルが良いと感じています。逆に、常設して運用するとなると、ラジアルを120本くらい埋めてやると良いでしょうが、タワーにビームアンテナの方が楽だと思います。 参考文献
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